【Except Imas】2020年のサイクルロードレース名勝負を振り返る
どうも。お久しぶりです。このブログではお久しぶりのマスニキです
このブログはアドベントカレンダーExcept imasの12月14日分の記事です。
昨日の記事はこちら
歩くスマホ屋台ことはやぽんさんの記事です
年中金無オタクの私は未だにiPad Pro9.7を使い倒してますが流石に挙動がおかしかったりするので変えどきかな…と思いつついまだ手が伸びない状況
余裕ができたらはやぽんさんに相談してみようかな
今日のお題:サイクルロードレース
なんかみなさんサイクルロードレースって言ったら長くて展開が分かりづらいとかそういうイメージありません?ないですか。
まあ実際サイクルロードレースは短くても2時間ぐらい、長いときだと300キロ以上、時間にして7時間(ミラノ~サンレモ2020は305キロ、優勝タイムは7時間16分)ずっと自転車の集団を追い続けるだけだったりするので「見ていて楽しいのそれ?」と言われることも多々あります(実際自分も言われたことあるので)
という事で今回は
サイクルロードレース知らないあなたにもおすすめの2020年名レース5選!(ハイライト付き)
(本当は11月中に書いてたはずだったんですよこの記事)
①ツール・ド・フランス第18ステージ 「王国」の再生-名アシストクフィアトコフスキー笑顔のツール初勝利-
2020年ツール・ド・フランスは波乱の連続。前年優勝者のエガン・ベルナル(INEOS Grenadiers)が不調に陥り、第16ステージ後に無念のリタイア。前身のTeam Skyからチームとして2015年から5連覇しているINEOSはエースを失い、以降は総合順位よりもステージ優勝を目指す戦いを強いられた
そしてこの第18ステージ、最初の1級山岳を登り終えたところでINEOSのセカンドエースと目されていたリチャル・カラパスと、これまで身を粉にしてアシストに徹してきたミカル・クフィアトコフスキー、更にはTDF2020総合敢闘賞に選ばれた新鋭マルク・ヒルシ(Team Sunweb)、そしてニコラ・エデ(Cofidis)、ペリョ・ビルバオ(Bahrain-McLaren)の5人が抜け出す。
INEOSの狙いは山岳ポイント*1を大量獲得し、山岳賞ジャージ*2の奪取、そしてチーム2年ぶりとなるステージ優勝だった。途中でエデが遅れると、3つ目の山岳の下りでヒルシがカーブを曲がりきれず落車。さらには最後まで一緒に逃げていたビルバオは後方で繰り広げられていた総合上位勢のバトルのアシストをするため逃げから脱落。最後の超級山岳を前にとうとうINEOS2人だけのエスケープとなった。
まず超級山岳をカラパスが1位通過し、山岳賞でトップに躍り出ると、その後は2人で先頭交代をしながらゴールを目指す。最後の1キロからはウイニングラン。そして最後は肩を組みながらフィニッシュ。
😍 PIC OF THE DAY 😍
— Tour de France™ (@LeTour) 2020年9月17日
by @century21fr #TDF2020
📸 A.S.O / Pauline Ballet pic.twitter.com/JTGOkvNtGy
最後はカラパスがクフィアトコフスキーを少し前に出す形でフィニッシュ。ツール史に残る美しいシーンとなった。
クフィアトコフスキーは世界選手権で優勝経験がありながらもツール・ド・フランスでは同じチームの大エース、クリス・フルームやゲラント・トーマスを献身的にアシストし総合優勝に導いてきた中、6回目の出場で初のステージ優勝。
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名勝負と言って良いのかはわかりませんが、今年の印象に残ったフィニッシュシーンって言ったらこれかなぁという感じ。今まではエースがいてそのアシストに全力を注ぎ込んでいたINEOS(前身のTeam Skyも)が泥臭く逃げからの勝利を狙う姿は心打たれるものがありますね。
①ツール・ド・フランス第11ステージ 意地のぶつかり合い!四つ巴の大混戦スプリントはポケット・ロケットに軍配
ツール2020のもう一つの波乱。これまで出場し、完走した年はすべてスプリント賞ジャージ*3を持ち帰っていたペーター・サガン(BORA-Hansgohe)が思うように力を出しきれず、去年までチームメイトだったサム・ベネット(Deceuninck-Quick-step)に完全に水を開けられていた。
この第11ステージはこのあとに山岳ステージが連続して来るため、サガンやベネットにとっては是が非でも取っておきたいステージだった。レースは序盤に単独で逃げができるものの最後は大集団によるスプリントに。
最初に抜け出したのは今年のツール、山岳でもスプリントでも力を発揮したワウト・ファンアールト(Jumbo-Visma)。先制攻撃を仕掛けられたサガンは狭くなった壁側からなんとかこじ開けようと迫る。更に左からはサム・ベネット。この3人で最後のフィニッシュラインの勝負…かと思いきやベネットの後ろから猛烈な勢いで迫ってきたのがカレブ・ユアン(Lotto Soudal)。そのままベネットと並び、更にはファンアールトを押しのけてきたサガンと4人が横一線でフィニッシュライン!
勝利を確信し、ガッツポーズをしたのはカレブ・ユアン!その後サガン、ベネット、ファンアールトの順でフィニッシュするも、サガンがファンアールトを押しのけた行為が危険なスプリントと判断され降着(同じ集団の最後尾フィニッシュ扱い)になり、ゴール地点でのスプリントポイントを大幅に失ってしまう。これによって第11ステージ時点でスプリント賞争いでトップを走っていたベネットがよりその地位を強固にした。
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この4人横並びスプリントも印象的なゴールシーンでした。ポケット・ロケットの異名を持ち、昨年のツールでは3勝を上げたユアンの爆発力もそうですが、選手のタイプ的にはスプリンターというわけでもないファンアールトが今年のツールでは何度もゴール前でスプリント力を見せつけたのも印象に残っていますね。
もし他のユアンのスプリントが見たい方はツール2020の第3ステージもおすすめです。まるで忍者のように後ろからいきなり出てくるユアンは衝撃的でした
ラスト1kmから!
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) 2020年8月31日
各チームがトレインを組んでスプリンターたちを送り出す!!
最初にフィニッシュラインを超えるのは誰だ?!#落車なしの安心フィニッシュ
Cycle*2020 ツール・ド・フランス 第3ステージ
【ニース 〜 シストロン】
生中継&LIVE配信中https://t.co/ahlrB9dorc#jspocycle #TDF2020 pic.twitter.com/JeSIZ2Dlun
③ツール・ド・ポローニュ第4ステージ 20歳の神童が大事故で失ったチームメートに捧げる逃げ切り勝利
2020年はコロナ感染拡大の影響で3月中旬から7月末まですべてのレースが中止・延期され、8月のレース再開後、今年のロードレース界を騒がせた大事故が起きてしまう。
8月にポーランドで行われたツールドポローニュ第1ステージ。最後のゴール前、大集団でのスプリントになった際、ディラン・フルーネウェーヘン(Jumbo-Visma)が右から差しにきたファビオ・ヤコブセン(Deceuninck-Quick-step)に体当たりのような格好でぶつかる。下り基調でのスプリントだったためバランスを崩したヤコブセンは猛烈なスピードで壁に衝突。更に壁が柔らかいプラスチックでできていたためヤコブセンは観客側まで吹き飛ばされてしまう。
https://www.youtube.com/watch?v=fvLcosllmZU(閲覧注意です)
結局フルーネウェーヘンは危険行為を取られてレース失格、更に9ヶ月のレース出場停止となり、大怪我を追ったヤコブセンは一時人工的に昏睡状態におかれるほどの重篤な状態に陥るも、現在(記事執筆時点)自転車に乗れるまでの回復を見せている。
その同じレースで圧倒的な力を見せつけたのが同じチームの若きエース、レムコ・エヴェネプール。第4ステージはクイーンステージ*4に位置付けられる山岳が連続するステージ。途中、有力選手を含んだ落車が発生するなど荒れたレース展開も絵ヴェネプールは冷静にレースを進め、逃げ集団を吸収したタイミングで単独アタック!なんと残り51キロ地点から単独エスケープを始める。
エヴェネプールの急戦に他の選手はついていけず最後のゴールまで逃げ切り。さらにフィニッシュ直前にはチームメイトヤコブセンのつけていたゼッケン75番を掲げる、まさにヤコブセンに捧げる勝利。後続と1分以上の差をつけ、ツール・ド・ポローニュの総合優勝を手にするのであった。
その後、エヴェネプールはイタリアで行われたイル・ロンバルディアでカーブの先にあった橋から落下する事故で負傷し、予定されていたジロ・デ・イタリアなどに出れないまま2020年のレースを終わってしまった。しかし20歳にして出場した多くのレースで好成績を収めたエヴェネプールの来年以降の活躍が期待される。
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メジャーな大会ではないですが、今年一番の大事故で負傷した仲間を思って奮闘する若きエース…という構図が素晴らしいレースでした。エヴェネプールはこれから絶対ツール・ド・フランスなどの大きい大会でも活躍できる力があるのでぜひ覚えておいてもらいたいです。
④リエージュ~バストーニュ~リエージュ2020 2020年最高のメンツが揃った最高のゴールスプリント…のはずが
自転車レースの中でも最も歴史のある大会、リエージュ~バストーニュ~リエージュ。2020年大会は今年大活躍した選手が最後のゴールスプリントで火花を散らした。
まずは2020年イタリア・イモラサーキットで行われた世界選手権でラストアタックからの逃げ切りで優勝を遂げたジュリアン・アラフィリップ(Deceuninck-Quick-step)
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝。更に今年のツール・ド・フランスでは最終盤まで総合トップを守り続ける安定の走りを見せたプリモシュ・ログリッチ(Jumbo-Visma)
そのログリッチを相手に積極的な勝負を仕掛け、最後には地元スロベニアの先輩を逆転し総合優勝を勝ち取ったタデイ・ポガチャル(UAE Team Emirates)
ツール2020総合敢闘賞、更に3日前にも伝統あるレース、フレッシュ・ワロンヌで優勝したマルク・ヒルシ(Team Sunweb)
この4人が最後の登りで抜け出すと、ラスト400mで後ろの集団から抜け出してきたマテイ・モホリッチ(Bahrain-McLaren)が合流しそのまま先制スプリント!アラフィリップが付いていきその後をヒルシ、ポガチャル、最後尾にログリッチ
アラフィリップはモホリッチを差したあと急に左に進路変更。ヒルシにぶつかってしまい、よろけたヒルシがさらにポガチャルにも接触しかけて実質争いから離脱。2人の失速を見たアラフィリップは優勝を確信しガッツポーズ!世界選手権優勝後最初のレース、しかも伝統のある大会での優勝を成し遂げた。
しかし、諦めない男がいた。ツール・ド・フランスで最後の最後に逆転され、念願だった総合優勝を逃してしまったログリッチだ。アラフィリップが進路変更したあとも右側から最後までペダルを回し続け、ハンドルを投げる。
写真判定にもつれた結果…
痛恨のアラフィリップ
— J SPORTSサイクルロードレース【公式】 (@jspocycle) 2020年10月4日
衝撃のフォトフィニッシュ
Cycle*2020 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ
無料中継&LIVE配信🚴♀️https://t.co/saMJuiTlIx#LBL #jspocycle pic.twitter.com/4R9YLWgpl3
最後までもがいたログリッチに軍配が上がった。これでログリッチはモニュメント*5初勝利。そしてアラフィリップは急な進路変更がヒルシの走路を妨害したとして2着フィニッシュが降着になり5位に。ツール・ド・フランスでも補給規定違反でペナルティをもらったりとついていない(うっかり?)ミスが続く不運の年となった。
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はい。今年一番の衝撃フィニッシュです。なにしろアラフィリップは世界選手権後最初のレース。しかも2連覇中のフレッシュ・ワロンヌを回避してのモニュメント勝負でこれ…なんというかアラフィリップはイケメンで山でも平地でも強くて楽器もできて完璧じゃん!と思わせつつもこういう変なうっかりがあるからなんか人間味があって良いんですよね(?)
かっこいいアラフィリップが見たい方はツール・ド・フランス2020第2ステージをどうぞ
⑤ロンド・ファン・フラーンデレン2020 積年のライバル対決!相手の有利なフィールドでも彼には関係ない!
石畳の激坂がコースのいたる所に散りばめられ、幾度と名勝負が繰り広げられたロンド・ファン・フラーンデレン。
今回の主役はリエージュでの雪辱を晴らしたいジュリアン・アラフィリップ(Elegant-Quick-step)*6
ツールでの活躍もめざましく、さらにモニュメントの一つミラノ~サンレモでも勝利し乗りに乗っているワウト・ファンアールト(Jumbo-Visma)、そしてそのファンアールトとジュニア時代からライバルとして火花を散らすマチュー・ファンデルポール(Alpecin-Fenix)
レースは予想通り残り38km地点で3人が集団から抜け出し、そのまま行くかと思われたが、なんとアラフィリップが後ろに下がってきていたモトバイクと接触し転倒。リタイアしてしまう。
一方ファンアールトとファンデルポールはお互いを牽制しつつもゴールまでの距離を減らしていく。ゴールスプリントとなるとツールでも勝利しているファンアールトに有利な状況だが、ファンデルポールは途中で行けると確信をていたようだ
フィニッシュラインに向かいながら、スプリントを開始する正しいギヤ選びと距離を考えていた。(スプリントまで)彼がなかなかスプリントを始めないということが、彼がもはや100%の状態ではないことを示していて、それが自信に繋がった。(ファンデルポール)
そして最後のスプリント。常に前で様子をうかがうファンデルポールと後ろから今か今かと機会を伺うファンアールト。つば競り合いは残り200メートルからファンアールトがスプリント開始!ファンデルポールも直ぐに反応し、2人は横並び でフィニッシュラインに飛び込むが、わずかにファンデルポールが先着。初のモニュメント制覇とともに親子2代でのロンド・ファン・フラーンデレン優勝という記録を作った。
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(2012年シクロクロスのジュニアカテゴリー時代のファンデルポール(中央)とファンアールト(左))
ファンデルポールとファンアールトはシクロクロス*7のジュニア時代からライバルとして戦ってきて、今やロードレースでもその2人のバチバチのレースが見れるとは…
ちなみに現在シクロクロスシーズン真っ只中。ファンデルポールは今季シクロクロス参加初戦でいきなり勝利しています。これからも2人が2つの舞台で戦う機会が増えるといいですね
ということで以上です。いかがだったでしょうか?
この記事を見て少しでもロードレースに興味を持ってくださると嬉しいです。
明日のExcept Imasの記事はTiny berryさんです
なんだよ秘密って!気になるだろうが!
最後まで読んでいただきありがとうございました
*1:コースの山岳の頂上に設けられた関門を通過した順位でもらえるポイント。より高く険しい山岳には高い点数がつけられている
*2:山岳ポイントの累積点が一番高い選手が着用できるジャージ。白地に赤い水玉模様
*3:コース途中の中間スプリント関門での順位で獲得するポイントと平地でのゴールした順位で獲得するポイントを合計して累計で一番多く獲得した選手に与えられるジャージ。緑色
*4:その大会で一番厳しいコースのステージにつけられる称号。難関山岳コースであることが多い
*5:ヨーロッパのワンデーレース内でも特に歴史が長く格式高いレース5つのこと。ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、ミラノ~サンレモ、イル・ロンバルディア
*6:ElegantはDeceuninckの子会社の窓の製造販売会社。宣伝のために期間限定でチーム名を変更していた